掃除と組み上げは工程数こそ多いが実はたいしたことがない。ムスタングの最大の難関は、これから行う、テイルピース調整→サドル調整→ブリッジ高さ調整→オクターブ調整…の無限ループである。
サドルの弦高調整をある程度やってチューニングしてみると、ビブラートがせいぜい2/3音程度とあまりダイナミックでないビブラートなのでテイルピースの調整箇所で調整。
ここの造形はとても美しい。
テールピース左右2箇所に調整用の穴があり、奥に6角の穴がありバネの引っかかっているシャフトが回転してテールピースの高さが調整できる仕組み。(↓清掃前の写真だが…)
オールUSA製のムスタングなのでインチで3/32というサイズ。
テイルピースを上げて行く方の調整はテンションと逆に力がかかるため弦を緩めなくても回る。弦も緩むので再チューニングして確認。これを繰り返して約1音半のダウン、半音のアップにセッティング。うねるように大きくダウンする柔らかい感触はストラトとはまったく別物。
テイルピースは上げすぎるとテンション弱くなるので弦落ちしやすくなる。
このムスタングの場合、ナットから3弦が外れやすい。2弦チョーキングで3弦の下に指をくぐらすと3弦がナットに乗り上げる(^_^;) この後のブリッジ高さ調整→サドル調整→オクターブ調整して、けっきょくここにまた戻ってくるのでほどほどの落とし所で次へ進む。
ブリッジの高さ調整。ブリッジ両サイドの穴に6角レンチ入れて回す。ここもインチで0.05″というサイズ。
7.5Rの指板に合わせてカーブさせてサドルも高さ調整する。ここでオクターブ調整も行う。12フレットでハーモニクス鳴らし、12フレット押さえた実音の方が高ければ、サドルをテイルピース方向へ後退させる。逆なら逆へ。
チューニングが合ったところでブリッジが垂直になるように(筒の真ん中に収まるように)ほんの少しだけテイルピース側に傾けてから弦を張り始める。
ブリッジをそれなりに上げてサドルは低めにしないと3弦4弦辺りのオクターブ調整ネジが弦と接触する。ブリッジの上げ加減と、サドルの下げ加減とのバランスを取るのがかなり大変。
※サドル逆向きに設置する方法もある。オークターブネジがネック側になる。場合によってはそっちのが良い結果の場合もあるが今回は試していない。
ここまでやって、チューニングして弾くとチョーキングしたりグワシとつかんでコード抑えても不思議とチューニングがあまり狂わなくなっている。謎。ストラトもそうだがフェンダーの規定通りに(取説通りとかだいたい基本の寸法に)調整するとなぜだかチューニングが狂いにくい。
激しいウェザーチェックの箇所は触るとポロポロ剥がれるとこもある。元の焼けていない白塗装がここらあたりは残っている。
4、7、11のフレット浮きはハンマーで叩いて修正(7と11のみ。4は影響ないのでそのまま)
リア側のスイッチは右(ブリッジ)側に倒した時の接触が悪い。が、押し込んだり、なんどか往復させる事で復活する。ともかくせっかく半田がちゃんと付いているので各部の半田はそのままで。ともあれオリジナルのスイッチは白のはずなのでパーツが見つかれば交換するのが良いかも。
サウンドハウス:ムスタングスイッチ http://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/168108/
この年代のムスタングはポプラ材らしい。軽く見えるが重量は3.7kg。一般的なストラト(3.2〜3.4kg前後)よりも重い。アルダーやバスウッドに比べ比重が多いのかと思って材の比重も調べてみたが大差ない。
ショートスケールなのでストラトより小さいイメージだったが実は背が高い!ボディもけっこうでかい!しかもコンター無しのボディ。確かに重いはず。納得。
ピックアップの出力は低め(5.3KΩ前後)なのでストラトと同じセッティングのまま弾くと迫力がない感じになるが、ちょっとアンプ設定を変えるとやはりフェンダーシングルの音で似てくる。
ペグは調子悪いがヴィンテージFキーペグ(F Style Tuning Peg)とそのまま交換できる代替えペグは新品では容易に入手できない。
ペグ穴を加工するならシャーラータイプで交換が可能。(シャーラータイプの太い根元は糸のこで切れる模様)
ギターワークス:FENDER USA フェンダー ’70s F ムスタングチューナー ニッケル
http://www.guitarworks.jp/fs/guitar/c/m010085
3弦、4弦にもストリングスガイドをつけると弦落ちは解消されそうだが、この年式のヴィンテージムスタングにはストリングスガイドは付けれない。付いたのは72年以降〜。
「ヴィンテージ ’66年製 ムスタング(その5)」への1件のフィードバック